2.その他主な眼の病気
視神経
1.視神経炎(ししんけいえん)
視神経炎には真の視神経の炎症ばかりでなく、多発性硬化症などの脱髄疾患や、全身性感染症(ウィルス性・細菌性)、栄養・新陳代謝障害、自己免疫などがある。また、メチルアルコール、エタンブトールなどの中毒による病変や、眼球や眼窩の炎症、副鼻腔や脳などの隣接組織の炎症が視神経に波及しておこることもあります。
【症状】
視力障害と視野欠損が特徴的で、視力障害は高度なものでは光の感覚さえ消失することがあります。
視野欠損は中心暗点や盲中心暗点、半盲性暗点を認めます。その他の症状としては、瞳孔が大きくなり、対光反射が消失したり、眼球運動に際して眼球深部の痛みを訴えたり、色覚異常もきたします。
【診断】
眼底検査では、病巣の部位によって、視神経乳頭の発赤や腫脹、静脈の怒張や蛇行がみられるものから、視神経乳頭にはまったく異常を認めないものまで、さまざまです。視覚誘発電位検査では電位の減弱や消失がみら、中心フリッカー値は低下します。
【治療】
内科、脳神経外科および耳鼻咽喉科的検索などで原因がみつかれば、その治療をします。原因不明の場合は、副腎皮質ステロイド薬の投与を行ないます。全身管理のために、入院が必要となります。また、ビタミン製剤や血管拡張薬などを併用することもあります。一時的に視力障害が高度であっても、治療により視力が回復し、多くの場合、予後は良好です。しかし、再発をくり返したり重症の場合には、視力が十分に回復しないこともあります。
2.うっ血乳頭(うっけつにゅうとう)
うっ血乳頭は、視神経乳頭が頭蓋内圧の亢進によって浮腫(むくみ)、充血した状態です。その原因は、脳腫瘍が約70%を占め、硬膜下出血・クモ膜下出血・脳膿瘍や脳水腫(水頭症)などでもみられます。
【症状】
初期には無症状なこともありますが、一般症状として頭痛・吐気・嘔吐などを訴えます。進行すれば視力低下を訴えることがあります。
視野検査では盲点の拡大がみられ、後期には視野狭窄もみられます。
【診断・治療】
眼科的な検査の他、脳神経外科的な検査(脳神経症状、頭部エックス線検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴映像法)検査、および脳血管撮影など)によって、診断が行なわれます。脳神経外科との連携により、原因を探求し、原因治療をします。
原因がとりのぞかれずに、うっ血乳頭が持続すると、視神経萎縮をおこし、視力低下・視野狭窄が進行し失明に至ることもあります。
3.視神経萎縮(ししんけいいしゅく)
視神経萎縮は、視神経の外傷、炎症、変性疾患、腫瘍など視神経の病変のみでなく、周囲組織から視神経への圧迫、視神経の血管病変、網膜疾患および緑内障などにより、視神経線維の変性萎縮と、その機能が消失した状態です。
【症状】
自覚症状として、視力障害や視野欠損がありますが、その程度は、原因となる疾患によってさまざまです。
【診断】
眼科的には、眼底検査で、視神経乳頭の色が、黄白色になっていたり、視覚誘発電位検査や蛍光眼底検査などの検索により診断されます。また、脳神経外科的な検索も行なわれます。
【治療】
原因が分かっている場合には、その原疾患に対する治療を行ないます。副腎皮質ステロイド薬やビタミン製剤などの投与を行なうこともありますが、その効果は不明です。一度、視神経萎縮が進行してしまうと、視神経はもとに戻らず、視力や視野障害の回復は困難です。