2.その他主な眼の病気
ぶどう膜
1.ぶどう膜炎
ぶどう膜の炎症と特徴は様々で炎症の部位や重症度によってかなり多彩です。
ぶどう膜炎で大事なことは、何割かのぶどう膜炎は炎症の原因を調べていくと全身疾患にともなう眼の症状として判明することが多いということです。そのため、原因検索としての全身精査が重要となります。ただ、結果的に30%くらいは原因不明となることもあることは事実であります。代表的な原因疾患は、下記に示すようなベーチェット病、サルコイド-シス、原田氏病、などがあります。こういった病気が原因であった場合は内科と協力して治療していくことも大事となってきます。
【症状】
かすみやそれに伴う視力低下、充血(めやにを伴わない)、まぶしさ、痛みなどがあり、また自覚的にはわからないですが炎症性に眼圧が上がったりすることもあります。
【治療】
上記のように原因により治療法は変わってきますが、基本的には局所の炎症を抑えるためにステロイドの点眼や注射が行われることが多くなります。また、炎症が落ち着いた後も再発も多く見られるため、計画的な治療が必要であり自己判断による点眼の中止などは危険です。そのため、結果的には通院治療が長期となることは理解していただくことが必要です。
2.虹彩炎(こうさいえん)
虹彩が腫れたり・充血する病気を虹彩炎と言います。虹彩の前には、前房があり、房水という涙のような液体(実際には涙よりも濃度が高い)が溜まっています。虹彩炎が起こると、この房水の中に、虹彩から茶色い色素や白血球・リンパ球・タンパクなどが出て、房水が濁ります。そうなると濁った水を通して見ることになり、視力低下やかすんで見えたり、光がにごりで乱反射して虹がかかって見えたりします。
【原因】
アレルギーや細菌、寄生虫、ヘルペスなどのウィルス、カビなどで起こります。まれには、糖尿病やリウマチがあるために虹彩炎 が起こることもあります。
【経過】
一度治っても何度も再発を繰り返すことが多くなります。経過が長引くと白内障や緑内障が起きたり、脈絡膜、硝子体、まれに視神経、網膜にまで変化が及ぶので、注意が必要です。
【治療】
一般的には副腎皮質ホルモンと散瞳薬とを使用します。
3.原田病(はらだびょう)
原田病は私たちは日本人を含む東洋人に多く、白人に少ないという特徴を持っています。ブドウ膜炎と同時にめまい・嘔吐・頭痛・耳鳴り・難聴などが起こり、1~2ヶ月すると頭髪や眉毛が白毛になることがあります。
この病気は3~6ヶ月で症状が収まってかなり良い視力に回復することが多いようです。しかし、まれに2~3年にわたってブドウ膜炎が続き、視力が悪くなることがあります。治った跡の眼底の色が特徴的で、非常に明るい眼底になります。これを夕焼け状眼底といいます。診断のためには脊髄検査や聴力検査も重要です。
【治療】
ステロイド薬が大変有効で入院の上、点滴で大量投与を行います。大量に投与するため、その後の減量の方法など副作用のチェックが重要です。
4.ベーチェット病
ベーチェット病は15~40才の男性に発病することが多く、次のような症状が出ます。
・ブドウ膜炎
・外陰部(陰嚢や大陰唇)の潰瘍
・舌や唇のアフタ
・皮膚の発疹
これがあれば、ベーチェット病だと診断できるといった特別な症状がなく、いろいろな症状の組み合わせで診断されます。また、何年間もこれらの症状が、互いに前後して出現したり消失したりします。この病気では、ブドウ膜炎が何度も再発を繰り返して起こり、次第に視力が低下して、ついには見えなくなってしまうことが多く、非常に治りにくいので難病に指定されています。
【治療】
治療は免疫抑制薬が中心となっています。免疫抑制薬は、治療の効果も強いですが、副作用も強いので専門医の指示に従うことが大切です。
5.サルコイドーシス
細胞の免疫力が低下し、心臓や肝臓など、さまざまな臓器に「細胞肉芽腫」が発生する原因不明の全身病です。20歳代に最も多く発症し、特に50代以降は女性に多く、全体的な男女比では、1対2と女性に多く、40~60%の患者さんに目の症状が起こります。最も高い頻度で現れるのが「ぶどう膜炎」で、そのほか硝子体の混濁や網膜炎なども伴い、視力の低下が起こります。
全身症状としては、「リンパ節の腫れや皮膚の結節、呼吸器症状」など。ステロイド薬の全身接与を長期間行いますが、緑内障を合併したり、硝子体の混濁などで、視力障害が残ることがあります。
ただ、この病気で失明することは少なくなっています。目以外では 胸部エックス線撮影と、血液検査でアンジオテンシン変換酵素の値が上昇していないかを調べます。
【治療】
ぶどう膜炎の治療は、ステロイド薬、散瞳薬の点眼、眼底病変が強い場合はステロイド薬の内服を行います。炎症の強い場合には、緑内障も生じやすく注意が必要です。